回想録・1
あのとき、突然不機嫌になった夫。
私には理由が全く思い浮かばなかった。
仕事で何かあったとか、なのかなとか。
考えたけど。
それにしては、徹底的な避けっぷりだった。
もともと会話なんて多くなかったけど。
必要最低限のみだったけど。
これは敵意とか憎悪とかに匹敵する類。
理由もなく、そこまでされる覚えもなく。
身に覚えがないのだから、
私だって、相手にしなければいい。
気にしなければいい。
そう言い聞かせて、やり過ごしたかったけど、
無理だった。
やっぱり、無理・・・
頑張ろうって、
もうちょっと頑張ろうって、
もう、頑張れないって、思った。
もう、頑張れない。
もう、充分頑張った。
もう、いいかなって。。。
むかしむかし・・・
ロボットになりたいなんて、思った。
心なんか要らない。
感情なんか、なければいいんだよ。
家事も育児もするべきことだけ、する。
何も思わず。
それだけでいいって。
そうやって頑張るつもりでいたのに。
ごめんね。
頑張れなくてごめんね。
子供たちに心の中で謝った。
もう無理だった。
幸い、夫の不機嫌さは、私を徹底的に避けることだけに留まっていた、それも長い時間。
おかげで、落ち着いて考える時間をもらえた。
さよなら。
道を別つ。
いままでも、ぼんやり考えたことはあるけど。
いよいよ本気で考えるときがきた。
いざ本気で考えてみると。
現実の過酷さが身に染みる。
シビアな世の中。
だからなのか。
ふと、思い付いたこと。
今までそんな発想、思いもよらなかった。
『私』がそんなことを思うだなんて、
私自身が一番驚いた。
だけど。
名案。
名案だと思った。
離婚の条件。
懐刀のような。
諸刃の、それ。
切り札のような、私の決意。
覚悟と。
春休みだったので、何も言わずに実家に帰った。
何も言わずに受け入れてくれて。
数日過ごした。
そして、心を決めました。
続きます。